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~妖怪衍義

 

「やぁ」
 その男は私が入るとにっこりと笑いながらこちらに手招きした。
「そろそろ来られるとお聞きしておりました。して、本日は如何様でわざわざご足労いたしたのです?」
 気の食わぬ顔。それが彼を見ての第一印象だった。なにせ胡散臭いのだ。
 その笑顔は人の良い顔をして、興味深そうにこちらを見ている。それだけを見ると皆気を緩ませ、気後れなくこの男と和気藹々話に花を咲かせられただろう。なにせそういう顔をしているのだ。
 だが、問題はそこではないのだ。
 問題はこの部屋にある。
 風通しのいい部屋に書棚が壁際に並び、本が敷き詰められている。それでも足りぬらしい。畳の上には幾冊も本の山ができている。辛うじて足場があるが、へたをしたら危うい状態には変わりない。
 その中心には長方形の座卓。檜の卓は見たところ随分使われているのだろう。それにも何冊か本が積み上げられていた。そして器用にも汚さないのだろうか、墨と筆が帳面を挟んで置いてあった。
 書生の部屋か何処かの先生の部屋ならごく有触れた光景なのかもしれない。実際、一瞬そう思った。
 おそらくそれに気づくには余程目聡い者か、彼と何回か付き合いのある者だけだ。 それほど何気なくそれはあった。それほど当たり前にこの部屋にそれはあった。
「如何された? ああ、この書物のことですか」
 一番手近にあったものを手に取ると、男は私にそれを向けた。
 萎びた草色の表紙に黒く秀麗な字がのたくっている。それは・・・・・・
「佐野豊房先生の図画を基にした百器徒然袋考上巻。なかなか興味深い」
 ちまたでは珍妙な物好きしか興味を示さないものを嬉しそうに男は持っていた。いや、むしろこの部屋にはある本はすべてこうよく言えば毛色の変わったものしかない、ないのだ。
 思わずため息をつき、頭に手を当てた。噂には聞いていたがまさかここまでとは。
 それを違った意味で取ったらしい。
「失礼致した! 私のことを紹介せなんだ! では改めて」
 一度咳をすると男は居住まいを正し、私に向き合った。
「十河(とつかわ)古書店の正岡柳作と申します」
 そして彼は再び私に微笑みかけた。
「以後お見知りおきを」
 そう言う彼の後ろには魑魅魍魎、化生がくすくすとけらけらと玩具を見つけたような瞳でこちらを見ていた。もしもう少しでも目聡くなければ本や筆などに擬態した彼らに気づくことはなかっただろう。

 そう、男の周りには妖でまみれていたのだ。


 それが私と男、正岡柳作との出会い。

 


 などと急に勢いで書いたものをしょっぱなで。
 大正くらいの設定です。

 お久しぶりです。
 名城です。
 現実逃避の片鱗でした!!!

 テスト、レポートなんか嫌いだああああああああああああああああああ!!!

 

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