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放置民

今度から放置民とお呼びください。
久しぶりです、名城です。

2か月近く放置していることに今気付きました。
時間はなんて速い……。
そうこうしているうちにもうすぐクリスマスですよ。
皆さん、なにか予定をたててますか?
と、思うとクリスマス小説なんぞ書いてみたいなぁと思う名城。

いや、毎度のこと実際どうなるかわかりませんがww

本当はハロウィンも書く予定だったんですよ。
実際途中まで書いてました。
ちょっと正岡さんというより一応焚之助のハロウィンに近い何か。

ぶっちゃけ以前書いたもののスピンオフです。

ですが正岡兄弟が出てくる前に見事に途中挫折。

って言うかこれ、焚之助じゃなくて渉がメインに目立ってます。

なにはともあれ、渉はすぐにハーレム状態になりすぎだと思います。
誰からも嫌われる渉を書いてみたくなってきた・・・(え
……結構渉ならあっさり受け入れそうな気がする。
いや、傷つきますよ?
特に仲のいい人だったらなおさら。

脱線しましたが、一応書いたんだぞ!宣言。

もっとも、あれはハロウィンの要素が見える段階に到達する前に終わりましたがwww

とりあえず続きに入れときまーす。
無理やり終わらせた感が否めない終わりですがw

時間軸的には智紀版のハロウィン小説で、三人が別行動に移って少し後の話です。


 

百鬼夜行~ハロウィンと言う名の同窓会もどき~ 


 


「久しぶりだな」

そんな言葉が聞こえたかと思うと、ふわりと風が吹いた。
振り返るとそこには二つの人影に付き添われて、柔らかい光が舞い降りた。

「相変わらず、二人とも変わんないな。元気だった? たぁさん、オウヒ」

現われたのは象牙色のさらりとした肩越しの髪、淡く灰色がかった瞳を持つ17・8歳くらいの人物だった。ドレープの入った白のインナーに黒革のジャンパー、小豆色と銀色の線が入ったスカーフを身に着けている。その視線は笑顔と共に前に向けられていた。

「……渉っ? 一……年ぶりか? 久しぶりだな」

やや驚いた顔をしてそう言ったのは、茶色の跳ねた長い毛を一つにくくった、かなりの長身の二十代後半くらいの青年。突然の相手の来訪に歳を重ねた妖怪だとて、動揺したらしい。こちらは名を焚之助、千歳近く生きる狸の妖怪である。

「ごめんね、たぁさんびっくりした? オウヒもごめんね」

そう言うと、人物――渉はすまなさそうに焚之助を見てその隣の青年を見た。

「久方ぶりだ、狭間の守人。謝るなどとんでもない。今年もお目にかかれて我は光栄だ」

それにオウヒと呼ばれた青年は微笑んで頭を垂れた。こちらは中華舞踊の衣装をまとった焚之助と同じくらいの歳に見える青年だ。赤銅色の髪を一つにくくり、紫の眼を持つ彼は何千という年月を経た神霊、今は桜の精霊である。腰には黒に金の装飾の入った扇をさしている。

「こ、光栄ってちょっとオウヒ……それになんだよ、よそよそしいな。『渉』って呼べばいいのにっていつも言ってるだろ」

少しムスっとした顔で渉はオウヒの前に歩み出た。そのたびにゆらゆらと足元の赤い花が揺れる。細い百合の花が集まったようなその姿は幽玄で、幻想的な雰囲気を持つ。


人はそれを――曼珠沙華または彼岸花と呼ぶ。
彼らは一面その赤い花が咲く野原のような場所にいた。


しかしよく見ると、赤に混じって真っ白の花や黄色の花も咲いている。

「別に短い付き合いでもないしさ。というかたぁさんより付き合い長いだろ?」

渉が歩くたびそばにある花が揺れる。その花は赤よりも、どちらかというと白や黄色がだんだん多く見受けられるようになった。
そしてオウヒの前に立ち止まると渉はため息をついた。

「非道いな、結構仲いい友達だと思ってるのに」

まるで渉に触発されて色が変わったように赤の中に白や黄色が咲く。

「私が上級神だとしてもそれは変わりないだろ」

顔を上げた渉がオウヒを見る。
柔らかい風と夕闇の世界に淡く光る花。
それは渉を歓迎しているようだった。

「ってちょっと待て」

そこでがしっと渉の肩を焚之助は掴んだ。

「なに、どうかしたのたぁさん」

少しため息をついた渉に、焚之助はにっこりと笑う。

「わしの前で壮祐比命といちゃつくのはやめてくれないか?」

「……」
「……」

それにしばし彼らの間に沈黙が降りた。すると困ったように渉は首をかしげた。

「……オウヒと私、いちゃついてるように見えた?」
「……わしに聞くか?」

少し半眼で言う焚之助。心なしか少し苛立っているように見える。それにどうしていいかわからない顔をする渉。

「そんなこと言われたら困るんだけどな……オウヒ」
「我と貴神が恋慕の情など……滅相もない」

即答するオウヒに渉はにこりと笑った。

「あの、さ? 毎回この話してるけど、ちゃんと名前、呼んでね? 次名前呼ばなかったらオウヒが私の存在を無視、ひいては否定したと取るから」

早く口でまくし立てる渉の眼は、その笑顔とは裏腹にとても冷たい色をしていた。

「他の神(ひと)は知らないけど、私、名前を呼べるのに呼ばれないこと――嫌いなんだよ」
「渉ちゃん……」

その表情に焚之助は息をつめて渉を見た。オウヒはただ、渉の様子に絶句して目を見開いたまま固まっていた。
それに笑みを消して後ろを振り返ると、渉は自分の肩から焚之助の手をどけてそのままその手を引っ張った。

「え、えーっとだな……」
「さぁいこっかたぁさん。せっかくのハロウィンでしょ? わざわざ次元の狭間で待っていてくれたんだし、行こう」
「いや、あのな」
「私は狭間の神だし、こう言う所にいても平気っていうかむしろ居心地よくもあるけど、力があるとは言え、たぁさんとオウヒはずっとここにいたら狭間に囚われるから」
「だからな!」

がしっと今度は頭を掴まれた渉は立ち止まって焚之助を振り返った。

「な、なんだよたぁさん! 急に頭つかんで」
「オウヒ殿のそばにいる渉ちゃんの眷属二名が怖いんだが?」

その言葉にはっとすると渉はオウヒを見た。


そこには短い紫髪に赤瞳のスレンダーな女性と苔色に空色の瞳の青年がいた。
両者とも笑顔で。
しかし目は笑っていない。


「我が主になんたる無礼。我らより格下の眷属でもない分際で主に懇意にしてもらえていると言うのに、かくなる上は主を煩わせるか。この鬼神風情が」
「壮祐比命(オウヒメ)? 渉様は君に優しくして下さっているんだよ? 立場をわきまえるのは大いに結構だけどね、僕は馬鹿は行きすぎると許せないんだよなぁ」


二人に挟まれてオウヒは青い顔で平伏していた。
心なしか周りの曼珠沙華も怯えるように反っていた。


「ちょ、ちょっと皓亜(こあ)! 紫浪(しろう)!」

慌ててオウヒの元へ駆け寄りながら言うと、青年は嬉しそうな顔でぱっとこちらを見た。

「はぁーいなんですか渉さん!」
「なにか御用か、主」

そして女性の方も凄んだ目は穏やかに戻り、静かに自分を呼んだ渉を見た。

「のん気な声で返事しない皓亜! そして紫浪も何食わぬ顔でさ!」
「えー別に僕は渉さんを悲しませたこの屑に先輩として礼儀作法を教えてただけですよー」
「あの、皓亜? 嬉しいけどそんな無邪気に笑っても駄目だよ? 怖いから」
「……御身は優しすぎる。この害虫は他と違って少々きつめにたしなめれば問題ない。そう言った意味では害虫でも買っている」
「こら紫浪、ちょっと可愛くむくれたって言っていることが恐ろし―からね?」

少し語尾を強くして言う渉の言葉に少ししゅんとする二人。

「でも……心配してくれてありがとう」

ため息をつくと渉は自分より少し背が高めの彼らの頭に手を置いた。それに心なしか青年と女性――皓亜と紫浪の瞳が嬉しそうに細まる。

「とんでもない。御身のためとあらば」
「渉さんっ大好きですっ」
「貴様はいちいち抱きつくなあああぁっ!!」

渉に抱きつこうとした皓亜に紫浪は素早く蹴りを入れたのだった。


― ……あー、そういえば渉にはこの二人がほとんどいつもいるんだった ―


そんな三人のやり取りをそばで見ていた焚之助は、そっとちょっと忘れられたオウヒのそばに寄った。一応顔を上げているが、オウヒは黙ったまま無表情に落ち込んでいた。

「壮祐比殿も大変だな。わしは神ではないから変な気は使わないが」
「仙妖だとてあの方々の前では普通気を張るだろう……我はお前が羨ましい」
「壮祐比殿は考え過ぎるだけだと思うがなぁ」

焚之助は苦笑しながら彼に手を差し伸べた。それを一瞬嫌な顔をしたものの、渋々受け取ったオウヒ。その時ちらりと焚之助は彼の腰に挟まった扇を見た。珠のついた紫の絹のような紐が垂れている。それを見てその目が一瞬すうっと細められれた。

「……わしは壮祐比殿の方が羨ましいな」

その小さな呟きをよくオウヒには聞こえなかった。
それを尋ねようとした時は焚之助は元の表情で渉の所へ歩いて行っていた。

「そろそろ落ち着いたことだし、ハロウィンの祭に行かないかわた……」
「そこの下衆」

そこで不意に焚之助は話の途中を遮られた。そこにはオウヒの前にいた時よりも冷たい侮蔑の眼差しを向けていた紫浪がいた。

― わしのことか ―

苦笑するとそのまま渉に近づこうとして、またもや彼は紫浪に遮られた。

「御身に近づくな、穢れる」
「はは、相変わらずだな紫浪殿も」

笑うと更に彼女は苛立ったようだ。それに間に入ろうと渉が動いたが、皓亜に手を掴まれた。

「黙れ、貴様に名を呼ばれるなど吐き気がする」
「紫浪、皓亜。あの、さぁ? さっきから私の忠告聞いてない? はっきり言わないとだめなの?」

喰い下がらない紫浪と皓亜に渉はこめかみを押さえて、困ったように顔をひそめた。しかしそれに反発して、紫浪は焚之助の前からどかない。そして皓亜は渉から手を離さない。
すると申し訳なさそうに皓亜は渉に言った。

「でも渉さん、僕も紫浪に賛同しますよ。あいつの場合目に入れるだけで腐る。触っただけで渉さんに穢れがついちゃいますよー」
「……というかそれなら渉ちゃんはすでにわしによって穢されていることになるけどな」


ぴくっ


「は?」
「だってわし、さっき渉に手を握られたしな? それに、それ以上も……なぁ?」
「貴様っこの減らず口を」
「さっきからさぁ渉様を呼び捨てにするなよ? この餓鬼」


「お前らいい加減にしろ」



空気を震わすビリっとした声があたりを響いた。


「皓亜」

「紫浪」


「獣の姿に成れ」


その言葉と共に一陣の風が起き、紫浪と皓亜を包んだ。
そして次の瞬間現われたのは紫の毛並みをした赤眼の獣。子どものコリ―犬みたいな動物だ。そしてあらゆるひれが帯のように長く垂れ、空色の眼をした苔色の魚みたいな生き物だった。
彼らに黙って歩みよると渉はその二匹を掴み上げて……

ゴツンッ

両者の頭に拳骨を喰らわせた。

呆気にとられるオウヒと焚之助をよそに、渉は涙目で衝撃を受ける紫浪と皓亜の二匹を抱えて抱き寄せた。
それに顔を上げる二匹。

「……せっかく久しぶりに会えたんだよ。それに祭なんだからさ、もっと楽しい雰囲気になろうよ」

少し申し訳なさそうにする渉に彼らははっと息を飲んだ。
その瞳に悲しみの色をにじませていたことに気づいたからだ。

「申し訳、ございません」
「すみませんっ。僕は……渉様っ」
「うんうん、わかってるから。私こそごめんね」
「御身が謝られることはない! 我らが至らなかったばかりに」
「渉様が仕事の疲れを癒されるどころか反対のことをしてしまってっ」


「うん、だから祭の間はずっとその姿でいることね?」


にっこりと笑顔で言った渉の一言で、二人(二匹)はひどく落ち込んだ顔になったのは言うまでもない。



「あー……私やっぱり彼岸花って好き」

青白く光る白い曼珠沙華を手に取りながら微笑んで渉は言った。

「赤、白、黄色。どれも好きだなぁ」
「渉ちゃん、本当に好きだよなこの花」

ふっと笑うと焚之助は渉の頭をわさわさと撫でた。

「わしも……師匠もこの花には強い思い入れがあるし」

ぶちっ

「あ、は、お師匠さん……好きだよね! うん! あとお孫さんも!」
「ああうん。ってお前何ぶちぶち花を引きちぎってるんだ?」
「いや! 必要だからさ、正当な手続きを踏んでこの狭間の世界からハロウィン祭の場所に行くのって!」
「……まぁそうだけど。って孫って……あの子に会ったことあんの渉?」 
「ああ……渉様はあの者達が特に気になるようだしな」

ぶちっ

「お、壮祐比命?」

情けない声と共にオウヒの方へ顔を上げた渉の顔を見て彼はぎょっとした。
その目が少し涙目だったからだ。

「わ、渉さ……?! も、申し訳ないっ」
「あ、いや私も変に反応し過ぎるのがいけないからっ」

― ……あまり突っ込まない方がいい話、か ―

「……まぁ早く祭に行かないか? すまないがわし、ちょっと向うに残してきたあいつらが心配なんだよ」
「あっ! そうだな! 妖怪のハロウィン祭の会場に行ってとっとと警備しなきゃいけないもんね!」

そう言うといそいそと渉は手折った曼珠沙華を抱えて真っ赤な野原の先を歩いた。それに続く焚之助とオウヒ。そして今は大人しく黙ったままついてくる皓亜と紫浪。
そうして彼らがしばらく歩いて行くと、不意に赤い野原が途切れた。そこには赤は一切なく、黄色と白の花のみ円を描くようにして咲いていた。そしてその中央の少し空いた円は素の地面が覗き、中心には……

「鳥居、あった」

渉はふうっと息をつくとそれを見上げた。
それはこの野原の中で異質に存在していた。
赤でも白でも黄色でも、まして植物の緑でもなく、樹木で出来た茶色の鳥居。
その鳥居は樹齢何千年の木と同じくらい独特な存在感を持っているのにもかかわらず、古めかしい気配全くしていない。上からぶら下がったしめ縄と鈴も傷やほつれなく、ただそこにあった。
それは奇妙なことだった。新品同様のはずの鳥居。しかし普通は神社の名前が書いてある鳥居の中心の板には、なにも書いてなかったのである。
いや、正確に言うと何かは書かれてあったようだ。しかし。それは「普通」の者では何か書きなぐった上に消すように上書きをしたようにしか見えない。

「この扉、結構移動するから早めに見つかってよかったー」
「いや渉ちゃんにかかれば扉も向こうからやってくるだろうよ」
「そんなことないよ」
「……渉様は狭間や境を司る者」

その言葉に彼らは振り返った。そこには静かに鳥居を見上げるオウヒ。

「自らの主に逆らうことはないだろう」
「主ったって……狭間の者たちは束縛されることを嫌うと言うか、変化を嫌うから私が来たら騒動を引き連れてくるから……早く出ていってほしいだけかもだけどね」

ははっと笑うと渉は腰を上げて隣りを見た。

「紫浪、皓亜。準備は出来た?」
「無論」
「できてますよー」

その言葉に焚之助とオウヒは彼らを見ると、彼らの周りには先ほど渉が摘んでいた花が地に刺さっていた。
四方に四角を描くように紅白の花が一つずつ刺さり、その中に五行の紋をかたどるように黄色の花が置いてあった。そして渉の手元には赤、白、そして黄色の曼珠沙華の首から上だけのもの。

「さぁて、皆中から出ないでね」

微笑むと渉はつうっと鳥居を見上げた。
その先にはしめ縄に大きな鈴。
左の手のひらに器用に三つの花を乗せると、渉はズボンのポケットに指を突っ込んだ。そして中から人差し指と中指に挟まって出て来たのは小さな鈴。
それを持って勢いよく渉は横に手を振った。


リーンッ!


澄んだ軽やかな音があたりを響くと、空気が止まったように風もなにもかも止んだ。そして呼応するようにしばらくして、少し低い鈴の音が響いた。
それは彼らの頭上の大きな鈴。それが淡く輝いていた。
それを見て渉は鳥居の向こう側に鈴を横投げした。


リーン……


音を立てて向うに吸い込まれていく鈴。しかしその鈴がどこかに当たった音はいつまでたってもこなかった。その代わり淡く鳥居が光り始め、その光は彼らがいた花に及んだ。まるで灯篭のように光る花達。特に白と黄色の花は中でも強い輝きを持っていた。
その中でも、渉と皓亜と紫浪が並べた花達は強く光を放っていた。しかしそれは目が痛くなるような光ではなく、淡く、空へと浮かび上がるような優しい光。
渉の手元にある花もそれは同じだった。
灯篭のように光る花に笑みを浮かべると、水をすくうように両手で渉は花を口より少し低い位置に持ち上げた。
それを黙って見る焚之助。
オウヒはただ、目を細めて渉を見る。
そして渉の口が小さく開く。まるで囁くように。


「祭へ通して」


優しく言うと、渉はふっと息を花に吹きかけた。


それほど強くなかったはずの息。
しかしそれはまるで羽根のようにくるくると踊るかのように宙を浮かびあがり、鳥居へと浮かんで行った。
赤、白、黄色の順番に。


そしてそれらの花が鳥居をくぐった瞬間。


あたりに一陣の風がざあああああっと吹いた。


そして静かになった目の前には鳥居と宙に浮いた三つの花、そして彼らの周りを渉達が置いた花だけ淡く光ってるだけだった。


あとは漆黒の闇の空間。


いや、他の花が消えたのではない。
ただ、他の花は光ることをやめ、静観することにしたように沈黙していた。いや花だけではなく、この空間そのものがこちらに意識をむけているともいえるのかもしれない。

「くぐろっか?」

くるりと振り返ると渉は言った。

「……そうだな」

頭をかくと何気ない雰囲気で鳥居を先にくぐる渉を見て焚之助は後に続いた。それにちらりと鳥居の向こうに直線を描くように並んだ三つの花見て、くぐるオウヒ。
最後に紫浪と皓亜がくぐった所で渉は後ろを見て確認してからすっと左の手のひらを上に上げて口を開けた。


「着いたよ」


その言葉に一瞬花が強く光ると後ろの置いてきた花が灯りを消した。
そして直線に並んだ渉達が来た側の花が淡く光った。
赤が後退して白に重なり、それらが後ろに下がって白に重なって最後に休むように渉の手のひらに乗った。


瞬間。
遠くから祇園の鐘を鳴らしたような、コンチキチンの音が近づいてきた。
と思えばまわりの景色が明るくなり始め……


「いらっしゃいー。五名様ですねぇ」


目の前に警備員の服を着た河童が提灯を持って現われた。


彼らは広い神社の境内の中に立っていた。





***




後ろを見ると長い石段が伸びて、上がるまでかなり時間が必要なように見えた。下では上がってくる人影がいくつか見えたりした。

「いやぁ渉さんがいらっしゃるなんて何十年ぶりですかねぇ」
「なに言ってんだよー一昨年は来たよ」
「はて? その時も私が門番でしたが……見かけませんでしたがね?」
「門からくるのが面倒くさかったから適当な所から入ったんだよ」
「それはそれは私も見かけなんだわけですなー」
「うん、そうだねー」
「今度はできれば正規の門から来て頂きたいものですねぇ」
「えへへ、ちょっとそれは無理かも? でも善処するー」
「ではでは皆さん楽しんで下さいな―。あ。焚之助さんは見回り兼でしたかなー」
「ああ、三平も仕事頑張んな」
「へへい、酒飲みながら頑張ってますわー」
「……あの飲んだくれの門番。大丈夫か」
「仮にも川を守る河童だ。壮祐比殿が心配するほど、そんなへまをすることはない」
「そうですね、門もあれが五番目みたいですし。それよりも渉さーん! 金魚すくいしましょーっ!」
「貴様金魚みたいな姿して言うことがそれか! 御身、それよりも女郎蜘蛛の綿菓子が美味だとか。腹ごしらえとしてそちらへ行かれては?」

人ではない達の夜がこうして更けていくのだった。


 


とまぁ……こんな感じです。
ここまで書いて10ページ。

なげぇ。

まだ一部し書いてないのに。

 

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